『ペンと剣』増補新版 内容案内

増補新版『ペンと剣』(中野真紀子 訳)が里山社から刊行されました。

『オリエンタリズム』などの著作で知られるエドワード・サイードのインタビュー集です。

サイードはコロンビア大学の比較文学の教授であり、パレスチナに関して積極的に関わり、そのことを自身の学問研究にも深く反映させた知識人でした。
1948年のイスラエルの軍事侵攻(ナクバ)で故郷を追われたパレスチナ人のひとりでした。

本書は1987年~1994年の7年間にかけて、オスロ合意という大きなターニングポイントを挟んでのインタビュー集になっています。

現在に至るまでのパレスチナ・イスラエル・アメリカ・アラブ諸国の関係性や出来事がよく分かります。

今回の増補新版により、現在の世界の在りざまが、サイードの指摘の先見性によって非常にクリアに見えてきます。

以下はこのインタビュー集で語られることのほんの一部ですが、
いまの日本にいる人々にとっても切実なテーマだと感じられました。

🌿サイードは早くからパレスチナとイスラエルの二国家共存、つまりパレスチナとしてイスラエルの存在を承認することを提唱していました(異なるものの否認や追放でなく)

🌿犠牲者の犠牲者としてのパレスチナ人、ヨーロッパでジェノサイドにあったユダヤ人によって迫害されるという非常に際立った立場にいることを指摘し、

🌿さらにインタビュー後のことになりますが、9.11.以後、排除したい相手をテロリストとみなす思考方式が国や地域を変え広がっていくことをサイードは危惧していたそうです。

「パレスチナという理念は、他者との共生、他者の尊重、パレスチナ人とイスラエル人とが互いに相手の存在を認めることである」
という一文がカバーに記されています。

遠い国の出来事が様々な観点から自分事に引き付けて考えられる本です。

他の関連書とともに販売をしています。

【出版社による紹介文】
分断が進む世界への絶望に抗うために
広い視野で希望を見出すサイードの思想

西洋中心の価値観に異議を唱え、アカデミズムの枠を越えて政治に声を上げた人物像を浮かび上がらせる、サイードをこれから読む人にも最適な一冊。西洋の視点を通して表象されたアラブ・イスラム世界のステレオタイプを、西洋が支配に利用してきたことを論じ、権力と知識の関係を問い直す古典的名著『オリエンタリズム』。西洋の文化や文学が植民地支配や帝国主義と深く結びつき、権力構造に奉仕してきたことを分析する『文化と帝国主義』。自著をわかりやすい言葉で語り、パレスチナ問題に通ずる世界の構造を広い視野で捉え「和解と共生」への道を示すインタヴュー集。

「パレスチナという理念は、他者との共生、他者の尊重、パレスチナ人とイスラエル人とが互いに相手を認めるという理念である」

目次

復刊によせて
序文 イクバール・アフマド
第1章 パレスチナ人の祖国追放をめぐる政治と文化
第2章 オリエンタリズム再訪
第3章 ペンと剣│文化と帝国主義
第4章 イスラエルとPLOの合意│批判的評価
第5章 パレスチナ│歴史への裏切り
謝辞 デーヴィッド・バーサミアン
2010年版序文 ヌバール・ホヴセピアン
エドワード・W・サイード略歴
文庫版・訳者あとがき
増補新版・訳者あとがき
索引 

著者プロフィール

エドワード・W・サイード  (エドワード ワディ サイード)  (著)

1935年イギリス委任統治下のエルサレムに生まれ、エジプト・カイロの英国系学校に通う。1951年に渡米しアメリカで高等教育を受ける。プリンストン大学、ハーヴァード大学で学位を取得。コロンビア大学で英文学・比較文学を教える。『オリエンタリズム』『知識人とは何か』(ともに平凡社)、『文化と帝国主義』『遠い場所の記憶──自伝』(ともにみすず書房)などのポスト・コロニアル研究における画期的書物を記す。1967年第3次中東戦争を機にパレスチナ解放運動の理念に共鳴し、ヤセル・アラファトの演説原稿の作成を手伝うなど西欧社会や文化への深い理解を通じて解放運動に貢献。1977年からPNC(パレスチナ民族評議会)のメンバーとなり米国との和平提案を仲介するなど、対話による解決に向けて尽力。『パレスチナ問題』『イスラム報道』(以上みすず書房)などのパレスチナ問題に関する書籍も多数出版。次第にPLO主流派とは隔たりが大きくなり、91年に白血病と診断されPNCを辞任。93年のオスロ合意には警鐘を鳴らし解放運動の中では孤立したが、死の直前まで精力的な政治批判をつづけた。03年死去。

デーヴィッド・バーサミアン  (デーヴィッド バーサミアン)  (著)

1945 年ニューヨーク生まれ。両親はアルメニア人でトルコにおける大虐殺(1915 年)を逃れてアメリカに渡った。コロラド州ボールダー市を拠点としたコミュニティー放送局の活動に携わり、アメリカの主流メディアが取り上げない体制批判の声をとどける番組「オルターナティブ・ラジオ」を1986 年後半に創始し、現在も活動を続けている。ノーム・チョムスキーとの数知れぬ対談が有名だが、その他にもエドワード・サイード、ハワード・ジン、タリク・アリ、アルンダティ・ロイ、ラルフ・ネーダーなど数多くのプログレッシヴな論客との対談を重ね、それに基づく書籍も多数刊行している。独立メディアの世界に大きな足跡を残し、多数の賞を受賞している。

中野 真紀子  (ナカノ マキコ)  (訳)

翻訳者。『ペンと剣』をきっかけに、サイードやパレスチナに関連する書籍や映像の翻訳を多数行っている。最新訳書はアーティフ・アブー・サイフ著『ガザ日記:ジェノサイドの記録』(地平社)。他の分野では、ノーム・チョムスキー/エドワード・ハーマン共著『マニュファクチャリング・コンセント――マスメディアの政治経済学』(トランスビュー)、ナオミ・クライン著『地球が燃えている――気候崩壊から人類を救うグリーン・ニューディールの提言』(共訳、大月書店)など。独立メディア系の活動では、ニューヨーク発の非営利メディア Democracy Now!の日本語版を提供する「デモクラシー・ナウ!ジャパン」の代表を務める。

「脱成長」読書会

10月に開催する読書会のご案内です。
テーマは「脱成長」です。

ニュースでは株価など景気の動向に注目が集まり、日常生活でも効率や生産性が絶対の価値のように見なされることの多い今の世の中。

そういったお金や経済のみを尺度とするのとは違う形での生き方や活動、仕事、暮らしに力を与え勇気づけてくれるのが「脱成長」の思想です。

フランスで2000年代初頭から始まった「脱成長」(フランス語でdécroissanceデクロワッサンス)の思想。

脱成長の思想は経済学や思想哲学の研究が土台となっていますが、学問だけに収まらない可能性が今回の読書会のテキストでは語られています。

土を耕したり、気候風土にあった料理を楽しんだり、または芸術に親しむこと、または地域や仲間と交流すること。そんな日々の喜びと手を取り合う、伸びやかな脱成長の思想です。

当店で3年前に行った『脱成長』(白水社)の読書会に続き、今回は関連する2冊の本が出たことに合わせて読書会を開催します。
今回の読書会のテキストはZINEの『Decolonize Futures vol.2』です。「脱植民地化と環境危機」が特集されています。

2本のインタビューが掲載されていますが、今回は『脱成長』の訳者である、立教大学社会デザイン研究科の中野佳裕先生のインタビューを取り上げます。
話題は多岐に渡り、とてもカラフルなテキストです。

物語や詩を読むこと、芸術に親しむこと(アニメも含むかもしれません)の大切さやその理由についても、新たな光を当ててくれるように思います。

本の内容やテーマに関わることで、普段感じていることなど意見を交わすことも読書会では大切にしたいと思います。
テキストが難しいなと思われる方も、ぜひ参加されてみてください。
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「脱成長 読書会」
10/12(土)18:30〜20:00
会場:ルリユール書店
現地開催のみ 参加費500円
10/13(日) 19:00〜20:30
zoom オンライン開催
参加費500円

テキストは当店の店頭での販売、またはオンラインストアでもご購入いただけます。メールでご連絡いただければ、口座振込でのご案内もできます。

また、Decolonize Futures さんのオンラインストラでご購入いただけます 。こちらではデジタル版のダウンロード購入も可能です。

参加お申し込みはメールreliure_shoten@outlook.com
インスタのDM、店頭、
またはPeatixでお願い致します。

皆様のご参加をお待ちしております。
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清水あすか 第5詩集『雨だぶり。』

八丈島の詩人、清水あすかさんの第5詩集『雨だぶり。』が入荷しました。
装画と装幀をご自身で手掛けられています。
24編の詩が収められ、読む度に新たな発見のある詩集です。

夏らしく、また当店の好きな詩を2つ紹介します。

“月が 
まんげつから、なんにちか
たって、上のそげた
形をしていて、 
カナリヤシが鳴る、向こう
ぬえの鳴く、夜には
さびしくないくらい。なんだかあたりが
満ちているから。”

“アスファルト一歩が百年
この毎日をかけてする支度
ひとつひとつ増えていくあとへ。
止まったパワーショベル骨の下くぐれ。
わたしはわたしを割る蝉の声の線ぜんぶに火をつけながら歩いて帰る。”

前詩集から5年ぶりの詩集。
詩と絵の個人誌「空の広場」や詩誌「びーぐる」などに発表した詩と未発表のもの含め、様々な詩が収められています。

当店には過去の詩集もございます。
(『二本足捧げる。』で第三回荻原朔太郎記念とをるもう賞受賞)
(新詩集:税込1,760円 過去の詩集:古本税込1,000円)

書籍刊行のお知らせ

7月上旬に水窓出版より刊行される『無職本』に、執筆者の一人として文章を寄せました。

水窓出版から企画趣旨が以下のように綴られています。

世間では無職期間を空白期間と呼んだり、何も積み上げていない、社会的なキャリアを成していない無為な時間という風に捉えられたりしますが、ただそれは、(屁理屈だと言われるかもしれないけど)現在の社会で上手く生き抜くための一方的な考え方とも言えて、社会と距離を取っていた孤独な時間が当人の血となり細胞となっていると考えている人もいるはずです。この本では現代社会の価値観に迎合する考え方とは別に、どこにでもいる普遍的な人々が、「無職」という肩書がついたときに考えていたこと、感じたことを、それぞれの表現方法で自由に書いてもらいました。
はっきり言って本書はビジネス書や実用書のようにわかりやすい有用性はありません。ただ、ちゃんと生きていけるような自信がなくて社会から距離を置いたり、道を外れてしまって途方に暮れていたり、いろんなことが起こる人生には無駄なことなど一つもないと言いたい気持ちがあって本書を作った気もします。不安定ながら自由である期間にどんなことを考えるのか。他の人の考えを知ることで、少しでも読者のみなさんの想像力の幅が広がっていけばと思っています。

私は「本の中を流れる時間 心の中を流れる時間」と題した文章を寄せました。
無職だった時に考えたこと・感じたことについて、本と本屋、さらには読書を視点にして綴りました。
無職になった時の辛いことも少し書きましたが、中心となるのは本を読むことがどんなふうに生きること自体を豊かにして、他者との接し方もより時間をかけた粘り強いものにすることができるか。それを中心に書きました。

他の執筆者の方は、松尾よういちろう(ミュージシャン)、幸田夢波(声優ブロガー)、太田靖久(小説家)、竹馬靖具(映画監督)、スズキスズヒロ(漫画家)、ほかにも会社員の方など様々です。どんな本になるか、今から楽しみです。

当店には7月5日ごろ入荷予定です。ご予約を承ります。ご注文は下記のご注文フォーム、またはメール、インスタグラムのDMにてお願い致します。当店は現在、毎週土日の12-18時に予約制でオープンしております。店頭でのお受け取りも可能です。郵送サービスの場合は送料をご負担いただきますが、本書のご注文でもご利用可能です。ただし、『無職本』単品でのご注文の場合は、古本文庫1冊おまけのキャンペーンは送料と配送のスピードを重視して対象外とさせていただきます。ご了承下さい。
他の本と合わせてご注文の場合は、古本文庫を1冊プレゼントさせていただきます。

皆様からのご注文をお待ちしております。

2020年6月21日 ルリユール書店 小野太郎

タイトル 『無職本』
出版社  水窓出版
著者   松尾よういちろう/幸田夢波/太田靖久/スズキスズヒロ/銀歯/竹馬靖具/茶田記麦/小野太郎
刊行日  2020年7月2日頃(当店入荷は7月5日ごろ)
価格   1450円+税
ISBN 978-4-909758-03-3
判型   四六判(128mm×188mm)/168P
製本   並製
装幀   コバヤシタケシ

執筆者の略歴など、詳しくは出版社のホームページをご覧下さい。
試し読みもできます。
https://suisoubooks.com/custom7.html

「がまくんとかえるくん」シリーズ

小学校の国語の教科書でおなじみの「がまくんとかえるくん」シリーズ。おっちょこちょいのがまくんと、そんながまくんにやさしく寄り添うかえるくん。がまくんの天真爛漫さがなければ二人の日常は面白くないし、かえるくんもやさしいだけでなく時に子供らしく無邪気で、わくわくする物語を作るのも上手。読んでいてこんな二人いるよね、あれもしかして自分たちと似てる? と思ったことのある読者の方も大勢いらっしゃるのではないでしょうか。子どもも大人も楽しめるシリーズです。

このシリーズの作者はアーノルド・ローベル。訳者は三木卓。文化出版局からこれまで4冊刊行されています。

訳者の三木卓さんは詩人・小説家・児童文学者・随筆家・翻訳者として様々なお仕事をこれまでされてきました。このシリーズが刊行されてもうすぐ50年。ずっと読まれ愛され続けてきました。三木卓さんは当店にとって大切な作家のお一人です。当店の開業にあたり、サイン本も作っていただきました。

EhonNavi のサイトでこのシリーズの翻訳秘話を読むことができます。
こちらをご覧下さい。

そしてまだ読んだことのない巻がありましたら、ぜひ手に取ってみて下さい。