数人で読む外国文学2020⑧東京創元社 HSさん

選書テーマ【読書でいろいろな国を旅する】

東京創元社/ミステリ・ファンタジー・ホラーに強いとされる出版社。創元推理文庫は創刊から60年をこえ、さらに2020年には凪良ゆう『流浪の月』が本屋大賞を受賞するなど、躍進を続ける出版社です。
今回、HSさんという、謎の切れ者の方が本を選んでくださいましたが、テレワークのさなか、自社から5冊、他社から5冊、国別になるようにきっちりと素晴らしい選書をして下さいました。これで、家にいても色々な国に思いを巡らすことができます。本の細かな特徴も、いま手にとってそこに目に見えるようです。(ジュンク堂書店福岡店担当者)

【イギリス】ミック・ジャクソン『こうしてイギリスから熊がいなくなりました』
田内志文 訳(東京創元社)
むかしむかし、イギリスには不思議な熊がいました。人間の服を着て綱渡りをする「サーカスの熊」。下水道に閉じこめられ、町の汚物を川まで流す労役をしていた「下水熊」。人間に紛れて潜水士として働く「市民熊」。彼らが人間に嫌気がさしてとった行動とは……。もうひとつのイギリスの歴史を教えてくれる奇妙な物語です。(東京創元社HS)

【ドイツ】フェルディナント・フォン・シーラッハ『犯罪』酒寄進一 訳(東京創元社)
異様な罪を犯した人間たちの哀しさ、愛おしさを鮮やかに描いた連作短編集で、ドイツ屈指の文学賞クライスト賞ほか三冠に輝きました。ドイツと日本は遠く離れていますが、魔に魅入られ、世界の不条理に翻弄される人々の姿には、共感できるところもたくさんあるのでは。国を知るだけでなく人を知るのに最適な一冊です。(東京創元社HS)

【スウェーデン】ホーカン・ネッセル『悪意』久山葉子 訳(東京創元社)
事件とは見た目どおりではなく、玉葱のように幾重にも重なり合った事実の中に、意外な真相が隠れているもの。デュ・モーリアばりの人間洞察と奥深さを備えた、5編からなる短編集。本当に人間は怖いと思わせる作品揃い。ところで、著者はスウェーデン人だが、なぜか5編中4編はオランダとおぼしき架空の町が舞台になっている。(東京創元社HS)

【旧ユーゴスラヴィア】ミロラド・パヴィチ『ハザール事典』工藤幸雄 訳(東京創元社)
旧ユーゴスラヴィアの奇才による、消えた謎の民族ハザールに関する事典の形をとった物語集。45の項目はどれから読んでもいいし、関連項目にそこから飛んでもいい。男性版と女性版があり、違いは10行。それぞれを抱えた二人が、お茶を飲みながら語り合うなんて素敵では? 沼野充義氏の解説も男女の版で異なります! (東京創元社HS)

【ベルギー】アドリーヌ・デュドネ『本当の人生』藤田真利子 訳(東京創元社)
狩猟好きなDV男の父親、夫に怯えるだけの母親。少女はそれでも幼い弟と楽しい日々を送っていたが、ある事故の後、弟は変わってしまい、父親の剥製部屋で小動物をいじめたりするようになる。少女は現実をリセットし、弟の笑顔を取り戻せるのか? fnac小説大賞他多くの賞を受賞した、ベルギー発のきらめくような傑作です。(東京創元社HS)

【アメリカ】ジェフリー・フォード『言葉人形』谷垣暁美 訳(東京創元社)
絶対に外れのない短編集を一冊教えて、と言われたら、さんざん悩んで、でも自信をもって私は「ジェフリー・フォードの『言葉人形』」と答えます。物語の詰まったガラス玉、天使と悪魔のチェスセット、甘き薔薇の耳、プリンセス・チャンの涙……綺想、悲恋、魔法、妖女、怪人と幻想文学のすべてが詰まった13の物語をお楽しみください。(東京創元社HS)

【フランス】ギヨーム・ミュッソ『パリのアパルトマン』吉田恒雄 訳(集英社)
他人同士の妙齢の男女が偶然、同じ不動産レンタルサイトでパリの超豪華な一軒家を予約。しかしダブルブッキングが判明して、同じ家で一緒に過ごすことに……。という、よくある恋愛映画っぽい導入からはまったく想像できない展開になる恐るべきミステリ! 読み終わるまで驚かされっぱなし、ページをめくる手が止まらない!(東京創元社HS)

【イタリア】ディーノ ブッツァーティ『魔法にかかった男』長野徹 訳(東宣出版)
現代イタリア文学の奇才の未邦訳短編集。なぜ今まで翻訳されていなかったのか不思議なくらい魅力的な作品が詰まっています。幻想小説の名手らしい奇妙なものから、寓話風の物語、アイロニーやユーモアが色濃く出ているお話まで、たっぷり楽しめます。装幀のモダンな格好良さもお気に入りで、長く読み続けたい本です。(東京創元社HS)

【韓国】チョン ユジョン『種の起源』カン バンファ (翻訳)(早川書房)
韓国ベストセラー作家のサイコミステリで、主人公は自宅で母親の死体を発見した26歳の男性。時々記憶障害が起こる彼は、前夜のことを覚えていませんでした。いったい何があったのか? 魅力的な謎を追うミステリ&スリラーの面白さとともに、韓国の母と息子の関係性が描かれているのが印象的でした。
(東京創元社HS)

【アイルランド】『夜更けに夜みたい 数奇なアイルランドのおとぎ話』
長島真以於 監修加藤洋子+吉澤康子+和爾桃子 編訳平凡社(2020年2月25日発行)現代文学ばかりではなく、昔から語り継がれ読み継がれてきた物語を是非。英国とはひと味違う、ケルト民族の国アイルランドならではの不思議が光る物語集。英雄フィンやオシーンの活躍にドキドキ。19世紀末から20世紀初頭にかけて、英国の挿絵の黄金時代を築いた画家のひとりであるアーサー・ラッカムの挿絵も素晴らしい!
(東京創元社HS)

東京創元社HP:http://www.tsogen.co.jp/np/index.html