数人で読む外国文学2020③倉方健作さん

選書テーマ【他者/世界からのディスタンシング】

倉方健作 九州大学言語文化研究院准教授。専門はヴェルレーヌを中心とする近代詩。共著に、『カリカチュアでよむ19世紀フランス人物事典』『あらゆる文士は娼婦である 19世紀フランスの出版人と作家たち』(共に白水社)がある。

倉方先生は、ランボーとヴェルレーヌのトークイベントでお話を聞き、今回依頼させて頂きました。イベントの時も、ユーモアたっぷりの楽しい語り口が印象的でしたが、今回も海外文学初心者が「読んでみようかな」と思えるような、楽しい選書をして頂きました。(ジュンク堂書店福岡店担当者)

『ギリシア悲劇 II ソポクレス』松平千秋訳(ちくま文庫)
どうしても自分の出自を知りたい!(『オイディプス王』)、アキレスの形見をもらうのは俺だふざけんな!(『アイアス』)などなど、英雄たちはひとつの思いに執着して悲劇にはまり込む。『アンティゴネ』の妥協を知らない頑ななヒロインとコミュニティの論理の対立は2500年後も読者をヒリヒリさせる。古典のパワー!(倉方)

ポール・ヴェルレーヌ『呪われた詩人たち』倉方健作訳(幻戯書房)
「秋の日の/ヴィオロンの/ためいきの…」の詩人ヴェルレーヌによる評論集。当時ほとんど未知の存在だった異形の詩人たち、ランボー、マラルメ、ついでに自分自身も世に知らしめた。なにしろタイトルがかっこいい。同時代人の才能を讃えるのは危険で困難なものなのに今見ても紹介された6人全員がアタリという奇跡の一冊。(倉方)

ウラジーミル・ナボコフ『ロリータ』若島正訳(新潮文庫)
真に偉大な作家は世界中の辞書に新語を加える。ロリコン、ゴスロリも根元を辿ればこの作品。ただ、幼さを残した女性がみんな「ロリータ」になれるわけでもなく、ニンフェットに惹かれれば誰もがハンバート・ハンバートというわけでもない。なお作中の「ロリータ」は1935年生まれなので(生きていれば)今年85歳です。(倉方)

フィリップ・ロス『素晴らしいアメリカ野球』中野良夫・常盤新平訳新潮文庫)
原題はThe Great American Novel。架空の球団を通して描かれるグレイトなアメリカのカリカチュア。発表当時はウォーターゲート事件渦中のニクソン政権下。同じく問題行動が多くグレイトグレイト言ってる大統領がいる今こそ、超大国を一塁側から野次り倒す本作を!今シーズン開幕を待ちながらぜひ。(倉方)

ダグラス・アダムズ『銀河ヒッチハイク・ガイド』安原和見訳(河出文庫)
「ユーモアSF」より「バカSF」の呼称が似合う5作+公式続編からなる金字塔の第1作。モンティ・パイソンや『Mr.ビーン』と同じ類のブリティッシュ成分が全編に染み渡る、サブカルチャーの基礎教養。google検索の小ネタとしても知られる「生命、宇宙、そして万物についての究極の疑問の答え」はこの本の中に!(倉方)