数人で読む外国文学2020④深沢潮さん

選書テーマ【「帰る場所はどこなのか」をめぐる物語】

深沢潮/小説家。著書に『ハンサラン 愛する人びと』(文庫版『縁を結うひと』)『ひとかどの父へ』『緑と赤』『伴侶の偏差値』『ランチに行きましょう』『あまい生活』『海を抱いて月に眠る』『かけらのかたち』など。

深沢潮さんは、数人で読む外国文学の前身となる「土地と文学」フェアでも選書をお願いしました。自己と土地との境界を越えた作品をご自身でも書かれ、選書でもシュリンクなど、土地にまつわる作品を多数執筆する作家の作品が選ばれています。自分の中の物差しは自分だけのものであり、他人によって長くされたり、短くされたりすることはないのだと、深沢さんの選書作品を読んで気付かされました。(ジュンク堂書店福岡店担当者)

ベルンハルト・シュリンク『帰郷者』松永美穂訳(新潮社・出版社品切れ)
心惹かれた作品に出会うと、私はその著者の小説を網羅したいという欲求が抑えられない。「朗読者」を読んで以来、シュリンクの作品は新刊を追い、既刊もほぼ読んだ。彼が描く作品世界から、在日コリアンの私が見出そうとするのは、戦争犯罪、国家の分断、越境者といった、自分の深いところにつながるものなのかもしれない。(深沢)

ベルンハルト・シュリンク『週末』松永美穂訳(新潮社・出版社品切れ)
20年ぶりに出所した元テロリストと家族、かつての友人たちがともに週末を過ごす。この物語が提示する、『思想』というものが人間関係をどう変えてしまうのか、人間関係が思想を縛るものでありうるのか、果たして大きな正義の前に小さな正義は犠牲にされてしまうのか、という問いを、私はコロナ渦中に度々考えさせられた。(深沢)

ベルンハルト・シュリンク『夏の嘘』松永美穂訳(新潮社)
嘘によって変わってしまう。嘘によって変わらずにすむ。小さな嘘。大きな嘘。悪意の嘘。善意の嘘。さまざまな嘘をめぐる7つの短編は、フェイクニュースの跋扈するいまこの時代に、あらためて「嘘」について考えさせられる。そもそも、小説とは虚構の物語だが、その「嘘」のなかに、真実や真理が潜んでいる。(深沢)

金承鈺『ソウル 1964年 冬』青柳優子訳(三一書房)
フェミニズム小説をはじめとした韓国文学の魅力のひとつが、権力や理不尽に抗う「強さ」ならば、それはまぎれもなく、抑圧された時代があったからこそ生まれたものだと思う。この小説が、時の政権がすべてを決定し、夜間禁止令のあった社会のもとに描かれたと知ると、よその国の昔の物語とは思えない。(深沢)